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そもさんせっぱちょーちょーはっし

意図せぬ告白-精子の境を巡って-

あるシチュエーションでこういう台詞を耳にしたことがあります。

「うわこいつの口、精子臭い」

品位の欠片もない言葉ではあります。
高校時代の部活動を終えた後、先輩の部室でこの台詞は生まれました。
先輩Oが、同室にいた先輩Hに向かって吐いた台詞です。

もちろん冗談混じりであり、普段のお互いの関係性は優良でしたから、
いじめに発展した、なんてことには至りませんでした。
高校生の馬鹿な茶化しあいの一こまでありました。

ですが、
僕はこの時のことを忘れることができません。
強烈に頭に焼き付いています。
何故か。

それは「言っていいことと悪いことがある」という正義感とか、
「親しき仲にも礼儀ありだろ」という礼節わきまえろとか、
そういう事ではなくて、直感的に
「人を茶化し罵る言葉としては不適当なのではないか」
と感じたからです。

実際に僕はその「精子臭い口臭」を嗅がせてもらった(「ちょっと嗅いでみ」と言われたので)わけですが、
納得いく「精子臭」は得られませんでした。
無臭だったわけでもなく、臭いといえば臭いのですが、
それは人間ですし、特筆すべきとも思えない程度の臭いだったわけです。
そこには全く腑に落ちない僕がいたわけです。

その場ではそこで話は流れ、誰もがこの馬鹿話をその場の話に留めて、
それぞれが帰り支度を整え始めるわけですが、
僕はこの「腑に落ちない感」が頭から離れませんでした。
そして一人、帰りの相鉄線の中で気付いてしまうわけです。
この「精子臭い」という言葉に秘められた本質に。

「〇〇の臭いが精子臭い」ということは、
「俺の精子は〇〇の臭いと同じだ」という告白と同じだということに気がついたのです。
これは大変なことです。
先輩Oにしてみたら「先輩Hを貶めて笑いをとる」行為だったのだと思うのですが、
よく良く考えてみるに笑い者にされるべきは先輩Oと思えてきたのです。
だって「俺の精子はこんな臭いなんですよ」なんて告白をしてる自分に気がついていないのですから。

このエピソードの教訓として得られたのは、


「〇〇は皆に共有されて然るべき事象」という先入観からの行動は、最終的に身を滅ぼしかねないので危険だ

ということでした。
ブーメラン怖いね、というお話。